今回は僕が考える「ソリューション営業の基本的な型」とその「型づくり」の仕方をご紹介します。
なぜ「型」という表現をしているか?「守破離」という言葉が示すように、武道であれ仕事であれ、「何か結果を出すことが前提のもの」には「基本的な型」が存在し、まずは愚直にその「型」を自分にインストールすることが、結果を出すための最短距離だと考えるからです。
また、すでに「型」がある場合は、その「型」を今の仕事の「型」に組み替えることが必要になります。その「型」の組み替えが出来ないと前の仕事では結果を出していたのに、今の仕事では結果を出せないという残念なことになります。
実は、僕が2社目のコンサルティング会社に転職後、なかなか営業として結果が出せなかった理由は、1社目の「御用聞き営業」「提案型営業」の型から脱却して、ソリューション営業、コンサルティング営業に「型」を組み替えることが出来なかったのが原因でした。
そもそも、ソリューション営業やコンサルティング営業の「型」を教えられる上司・先輩もいませんでした。「コンサルティングの現場に同行し、見て学べ」というスタンスでしたので、余計に遠回りをしてしまいました。
この記事にたどり着いたあなたには、その苦しみを味わって欲しくない。出来れば、最速で「基本の型」を身に着けて、「自分の型」に進化させて欲しいと願っています。
おそらくこの型づくりの3ステップを理解し基本の「型」を身に着けることが出来れば、誰よりも早く「ソリューション営業として結果が出せる自分になれる」はずです。じっくりとご覧ください。
※特にソリューション営業の初心者・未経験者の方は、何度も何度もこの記事に立ち戻って、自分のソリューション営業としての型が基本から外れていないか確認すると良いと思います。
型づくりステップ1:ソリューション営業とは?その意味を理解して「スタンス」を確立する
まずは、ソリューション営業とは何か?ソリューション営業とは営業スタイルの1種です。ですので、まずはその「営業スタイル」の意味、定義をしっかりと理解します。これが第一ステップです。この定義の理解が型づくりの起点になります。
なぜなら、ソリューション営業が「他の営業スタイルと何が違うのか」を理解していないと「型の骨組み」を創り上げることすら出来ないからです。
他の営業スタイルと比較して、「違い」を理解することで、ソリューション営業のスタンスを確立しましょう。
ソリューション営業の意味・定義を知る
ソリューション営業とは、「顧客の課題を解決するために解決策(ソリューション)の1要素として商品やサービスを提供する営業スタイル」のことです。
この営業スタイルは、IT業界や金融業界で多くみられます。
前者であれば、システムのインフラやウェブ上のクラウドを使ったプラットフォームを販売する、後者であれば、融資に絡めて事業承継、M&Aなどを絡めてサービスを提供するといった具合です。
他の営業スタイルと比較して、ソリューション営業の意味・定義を理解する
意味・定義を知っただけでは、おそらく理解できていないため、ここで他の営業スタイルと比較して理解を促しましょう。
営業スタイルには、大きく4つのスタイルがあります。「御用聞き営業」「提案型営業」「ソリューション営業」そして、「コンサルティング営業」です。一つ一つ見て行きましょう。
御用聞き営業
御用聞き営業とは、「営業に割り当てられた担当エリア内の顧客をルート営業して回り、顧客が「欲しい商品」「欲しいサービス」が無いかを訊いて回る営業スタイル」です。
では、御用聞き営業のイメージをより理解するために「サザエさん」に登場する三河屋の三郎「通称:サブちゃん」で説明しましょう。
サザエさん「あっ、サブちゃんいいところに来たわ。お醤油を大至急ちょうだい!」
サブちゃん「毎度ありがとうございます!大至急お持ちしますね」
この営業スタイルが典型的な御用聞き営業です。完全に顧客主導で営業はルートを回るだけで、注文をもらって、納品する役割がメインです。
提案型営業
提案型営業とは、「顧客に頼まれたもの以外にも、顧客のニーズを推測してアップセル(上位品を販売する方法)やクロスセル(他の商品を追加で販売する方法)を仕掛ける営業スタイル」です。
ここでも、サブちゃんの事例でイメージを深めましょう。
サザエさん「あっ、サブちゃんいいところに来たわ。お醤油を大至急ちょうだい!」
サブちゃん「毎度ありがとうございます!大至急お持ちしますね。あっ、そういえば今、いつもの消費よりワンランク上の美味しい醤油が+300円なのですがいかがですか?それと、先月お届けしたみりんが無くなりそうかなと思うのですか追加でもう一本いかがですか?」
この営業スタイルのサブちゃんはかなりちゃっかり者のイメージですよね。完全に顧客主導ではなく、自分でサザエさんのニーズを考えて、頼まれていない商品やサービスを提供しようとしている。
ただし、今の営業職はこの提案型営業が出来ることが最低ラインでしょう。近いうちに御用聞き営業は、インターネットのECサイトにとって代わられるはずです。営業職を名乗る以上は最低限「提案型営業」が出来ないと生き残っていけません。
ソリューション営業
ソリューション営業の定義は、上記で紹介した通りですが、再掲します。「顧客の課題を解決するために解決策(ソリューション)の1要素として商品やサービスを提供する営業スタイル」のことですね。
三度、サブちゃんの事例で理解を深めましょう。
サザエさん「あっ、サブちゃんいいところに来たわ。お醤油を大至急ちょうだい!」
サブちゃん「毎度ありがとうございます!大至急お持ちしますね。ちなみに、大至急ということは、今夜は『すき焼き』ですか?」
サザエさん「そうなのよ!良く分かったわね!」
サブちゃん「だと思いました。この季節は、サザエさんの家、よくすき焼きしますもんね。だとすれば、みりんやお砂糖、野菜なども必要ですよね。先日、とても美味しい焼き豆腐、新鮮な白菜が仕入れできたんですが、いかがですか?」
この営業スタイルは、「今夜、美味しいすき焼きをために、必要なものを一刻も早くそろえたい」というサザエさんの課題を解決するために、商品を販売しています。まさにソリューション営業の事例ですね。ただ、サザエさんでソリューション営業するサブちゃんは見たことありませんが(笑)
コンサルティング営業
コンサルティング営業とは、「助言や指導をしながら、顧客の課題を解決するために解決策(ソリューション)の1要素として商品やサービスを提供する営業スタイル」のことです。
「助言や指導をしながら」「先生ポジション」を取るというコンサルティング要素が入っているのがソリューション営業との違いですね。
四度、サブちゃんの事例で理解を深めましょう。
サザエさん「あっ、サブちゃんいいところに来たわ。お醤油を大至急ちょうだい!」
サブちゃん「毎度ありがとうございます!大至急お持ちしますね。ちなみに、大至急ということは、今夜は『すき焼き』ですか?」
サザエさん「そうなのよ!良く分かったわね!」
サブちゃん「だと思いました。この季節は、サザエさんの家、よくすき焼きしますもんね。だとすれば、みりんやお砂糖、野菜なども必要ですよね。先日、とても美味しい焼き豆腐、新鮮な白菜が仕入れできたんですが、いかがですか?ちなみに、すき焼きの美味しさを3倍にアップする裏ワザがあるんですが、知りたくありませんか?」
サザエさん「知りたい!教えてよ!」
サブちゃん「分かりました!その代り、来月の休日のご馳走の材料、調味料の注文は全てうちにくださいね。」
サザエさん「分かったわ!はやく教えて!」
サブちゃん「いいですよ!その裏ワザというのは~なんです。ただ、秘伝の隠し味の調整が難しいのでサザエさんの代わりに僕がやってみせますね。そのやり方をよく観察して覚えておいてください。」
いかがでしょうか?絶対にサブちゃんはやらないと思いますが、助言と指導を行い、サザエさんの「先生ポジション」を獲って立派なコンサルティング営業しています。
4つの営業スタイルの違い
いかがでしたでしょうか?4つの営業スタイルの「違い」を理解できたかと思います。
これらの営業スタイルの大きな違いは、「御用聞き営業」「提案型営業」が顧客主導なのに対して、「ソリューション営業」「コンサルティング営業」は営業主導であることです。
また、サブちゃんの事例では分かりづらいですが、「ソリューション営業」「コンサルティング営業」スタイルを獲っていくと、業者型・プッシュ型からパートナー型・プル型の関係性に変わって行きます。
ソリューション営業が求められる背景を理解する
では、そういった営業スタイルが求めらえる背景は何でしょうか?
それはインターネットの普及によって、営業と顧客の情報格差が是正されて、商品やサービスに関する情報は無料で手に入るようになり、従来の「御用聞き営業」や「提案型営業」では結果が出しづらくなったためです。
欲しい商品・サービスが分かっていればインターネットで注文しますし、Amazonなどのように購買傾向からシステムが「これもいかがでしょうか?」と提案することもあります。
そのため、単に商品やサービスを販売・提供する従来型の営業スタイルではなく、顧客の課題を解決するために自社の商品やサービスを販売・提供する「課題解決アプローチ」という本質的なソリューション提案が出来る営業職が必要になったのです。
ソリューション営業の種類を理解する
次は、ソリューション営業の種類を理解しましょう。ソリューション営業には「受動型ソリューション営業」と「能動型ソリューソン営業」の2種類があります。
前者は、顧客が解決依頼したニーズ(顕在ニーズ)が起点となって、営業を行うソリューション営業です。「顧客主導のソリューソン営業スタイル」と言えます。
顧客の中で、何が問題か?何が課題かすでに分かっているため、「この問題(課題)を解決して欲しい」という形で依頼が来ます。
このスタイルの欠点は、受注までのプロセスが営業サイドでコントロールできず顧客任せになってしまうことです。つまり、案件の与件を営業が創造することはできず、「与件整理」しか出来ません。また、営業が案件化するまでのプロセスをコントロールできないため、数字を積み上げる計画(アカウントプラン)を効果的に回すことが出来ません。
一方で後者は、顕在ニーズには当然対応するのですが、顧客がまだ気づいていないニーズ(潜在ニーズ)も起点にして、営業を行うソリューション営業です。「営業主導のソリューション営業スタイル」と言えます。
このスタイルの利点は、受注するまでのプロセスを営業サイドである程度コントロールできるため、数字を積み上げる計画(アカウントプラン)を効果的に回すことが可能です。
また、レベルがアップすると営業サイドで案件化をコントロールすること、つまり「与件創造」が出来るようになります。
型づくりステップ2:ソリューション営業の基本プロセスとは?流れと要を押えて営業プロセスを習慣化する
ここでは、ソリューション営業の基本プロセスを解説します。
ただ、あくまでも「基本」プロセスであり、「BtoB」なのか「BtoC」なのか、「対 見込客」なのか「対 既存客」なのか、で細かいプロセスは変わりますのでご注意ください。
ソリューション営業の基本プロセス
ソリューション営業の基本プロセスは「準備フェーズ」と「実行フェーズ」の大きく2つのフェーズに分けて理解すると良いと思います。
準備フェーズ
ステップ1:顧客理解を通じた、課題仮説と解決策仮説を考える
ソリューション営業は、顧客の課題を「起点」としてアプローチをしかけ、特に「潜在ニーズ」を顕在化する働きかけをすることで、案件化していくのが特徴です。
ですので、ソリューション営業の実行前に顧客がおかれている外部環境、内部環境などの理解、顧客の事業環境、家庭状況などの事実情報(ファクト情報)を収集し、その事実情報から考えて課題仮説と解決策仮説を構築しておきます。
実行フェーズでは、この準備した仮説をぶつけて、検証し、仮説検証サイクルを回すことで、潜在ニーズを顕在化しながらプロセスを営業主導で動かしていきます。
ステップ2:実行フェーズが仮説通りに進むとした場合に効果的な営業ツールを準備する
ステップ1で考えた仮説がその通りである前提で、営業プロセスを効果的に進めるために効果的な営業ツールを準備しておきます。会社案内、自己紹介シート、企業情報誌、商品・サービスのカタログ、オリジナルの営業ツールなどです。
実行フェーズ
ステップ3:信頼関係の構築を行う
まだ取引がない、顧客と関係性が深くない場合は、このフェーズが入ります。信頼関係を構築していなければ、顧客は事実を自己開示してくれず、ソリューション営業になりません。
ステップ4:顧客とのヒアリング&ディスカッションを通じて、課題を明確にし、解決策(案)を固める
「質問」「傾聴」を駆使してヒアリングを行い、コンテンツとフレームなどを「情報提供」しつつ、自分の考えも伝え、ディスカッションを行います。
その結果、課題が何であるか明確になり、それと同時に解決策(案)が見える状態になれば「ソリューション企画の骨子」が固まったと言えます。
ステップ5:ソリューション企画のプレゼンテーション
「ソリューション企画の骨子」にコンテンツを肉付けして、プレゼンテーションのコンテンツを準備します。そして、対面、メール、電話などのコミュニケーション方法で効果的なプレゼンテーションを行います。
ステップ6:クロージングする
プレゼンテーションした後は、きっちりと案件を受注するためにクロージングまで持っていきます。
型づくりステップ3:ソリューション営業の基礎力とは?マインドとスキルを理解して、自己成長させる
最後は「ソリューション営業の基礎力」の理解です。
では、そもそも基礎力とはなんでしょうか?基礎となる「力」です。
では、力とはなんでしょうか。これは「マインド(意識)」と「スキル(能力)」の二つに分けることができます。
そこで、ここではソリューション営業に必要な基礎的な「マインド」と「スキル」をご紹介します。
ソリューション営業の基礎的な「マインド」
まずは、マインドです。これは「単なる営業職ではなく、顧客の問題や課題を解決するプロフェッショナルである誇りを持つこと」に尽きると思います。
このマインドセットがあることによって、単なる営業ではなくソリューション営業としてスキルを発揮して、結果を出すことが出来ます。
ソリューション営業の基礎的な「スキル」
では、スキルとしてはどのようなものが必要なのでしょうか。「準備フェーズに必要なスキル」と「実行フェーズに必要なスキル」の二つに分けて整理してみます。
準備フェーズに必要なスキル
顧客理解力…顧客が置かれている外部環境、内部環境を理解して、顧客の事業状況や家庭状況などを理解する力です。
この力がないと、精度の高い課題仮説を立てることが出来ません。BtoBの場合は、公式ホームページや採用ページなどの公開情報の収集は当然です。BtoCの場合は、顧客のカルテをつくるイメージで情報をかき集めるとよいでしょう。
実行フェーズに必要なスキル
思考力…思考力については「仮説思考力」「問題・課題解決思考」の二つが必要です。
前者は、事実情報から精度の高い仮説を考える力。ソリューション営業の起点となる顧客の潜在ニーズを顕在化するために必要です。
後者は、問題や課題を明確にして、その解決策を決める力です。拡散と収束のプロセスを通じて、問題・課題解決へのシナリオと鍵を見つけます。
なお、2つの思考力ともに「論理的思考(左脳で言葉で筋道立てて考える力)」と「イメージ思考(右脳でイメージを組み合わせて考える力)」がベースになります。
コミュニケーション力…コミュニケーション力には「質問力」「傾聴力」「プレゼンテーション力」「ネゴシエーション力」「ファシリテーション力」の5つが必要です。
- 「質問力」はオープンとクローズのクエスチョンを使いこなして、精度の高い結論(仮説)を導く力。
- 「傾聴力」は顧客の話を聴き、事実情報を正しく理解し、共感する力。
- 「プレゼンテーション力」は、ソリューソン企画を提案し、その提案の受諾という行動を依頼する力。
- 「ネゴシエーション力(交渉力)」は、顧客と自身・自社の利害を調整し、WIN-WINの関係性にする力。
- 「ファシリテーション力(場づくり力)」は、複数の当事者の意見を集約する、発散する場づくりをする力。
専門知識…専門知識は、ソリューション営業を成立するために必要な「課題リスト」と「解決策リスト(カタログ)」を正しい知識として理解・記憶していることが必要です。この専門知識がないと課題を明確に出来ても、その解決策として商品やサービスを提供することが出来ません。